Menu
Back

Sisizaryuseigun, since 2004.07.21

140文字SSまとめ - vol.3 [マオヒエ]

[ 厳密には140文字ではない話 - お題元 ]



21.『ちょっと黙って』 ──── 2018/10/10

いつもの口喧嘩が始まった。
と言っても、それ自体が日課になりつつあるような二人だったので、その殆どは茶番と呼んで差し支えないものであった。
だが、今日は違った。片側が怒りに任せて、相手の口を塞いでしまった。
目には目を、歯には歯を。ならば、口には口と? 馬鹿馬鹿しい、やはり茶番じゃないか!


22.『好きなのにね』 ──── 2018/10/11

「お前なんか嫌いだ」
──素直になる時宜を逃して、どれくらいの時間が経ってしまったのか。
眉一つ動かさない彼の瞳が少しだけ悲哀に澱むのが見えても、本心を吐き出す事は叶わない。
あまりの居た堪れなさから絞り出すように「すまない」と言っても、彼は「素直じゃないな」と微笑みかけるだけだった。


23.『きっとたぶん』 ──── 2018/10/12

今の自身を表すならば、ただ一言。思わせぶり。これに尽きる。まあ、仕方あるまい。
言葉一つとはいえ小僧を翻弄させたのは事実であるし、責任も感じている。何と言うか、舐めていたのだ。
甘さというか、青さというか、そういうものを……いや、奴も一応は大人であるはずだし……大丈夫だろう、多分……


24.『弁慶狙いのローキック』 ──── 2018/10/13

「おうおう、その程度で余は動かんぞ」
「手加減してやっているんだ、馬鹿野郎!」
余裕の面持ちで煽り促す帝王に、青年が本気の蹴りを繰り出した。「待ってました」と言わんばかりに受け止める帝王の口が愉悦で歪む。
これでようやく“今日”が始まった。そう、それだけで充分! さあ、喧嘩(じゃれあい)を始めよう!


25.『もしも魔法が使えたならば』 ──── 2018/10/16

「ほぉ〜う、魔道書とは珍しい」
「お前が読んでなさそうな本がそれくらいしか思い付かなかったんだ」
「それだけじゃないだろう? 何を企んでいる?」
「俺が魔法を使えれば、はぐらかしてやった所だが」
「フン、まぁな」
「でも……」
「でも?」
「いや、何でもない」
「ふーん」
「な、何だよ、その目……」


26.『大人しく降参して』 ──── 2018/10/17

普段の凛とした雰囲気など微塵も感じさせない、我儘放題な小僧と付き合うのは本当に重労働だ。
黙らせる目的で弄り倒しても、まるで疲れを見せてくれない。
何なんだ……精力絶倫の類か? それとも、ただ強がっているだけなのか。
あ、違うか……若いのか。ああもう、とにかく早く終わってくれないかな……


27.『一番厄介な存在』 ──── 2018/10/18

双方にとっての「愛」とは何か? 二人に聞けば、同時に「厄介な存在」と答える事だろう。
それを乗り越えた先の繋がりを求めるのならば、それなりに理解というものが必要だ。
理解するには、何が必要だろう? そう、時間だ。だが、そこに与えられた時間は僅かしかなく、その運命を塗り替える事は許されない。


28.『不器用な世界』 ──── 2018/10/19

言葉で上手く伝えられないのなら、肉体で分からせるしかないのだろうか?
違う、そんな事をしたいわけじゃない。もっと優しく、薄い硝子を扱うように触れていたかった。
たった一言、その二文字を伝えられたら、曇天の空にも抜けるような青を見せる事だろう。だが、出来ないのだ。この不器用な世界では。


29.『君の傍』 ──── 2018/10/20

横に座るだけで幸せだった。重たい布が大きな壁となって立ちはだかる感覚が不思議と癖になっていた。
全てを飲み込んでしまうかのような圧倒的な存在感。二人だけで見つめる静かな時間は、その感情を独占する事さえ簡単だ。
君の隣、君の傍。切り取られた刹那が、心の中で永遠の風景になろうとしている。


30.『幸福な朝』 ──── 2018/10/21

小鳥の囀りが耳を掠める。夜の帳は既に引き上げられ、日の出を迎えたばかりの陽光が朧気な意識を呼び覚ます。
大きな音を立てないようにそっと身体を起こして、ふうと一息。一人の青年が使うにはあまりにも大きすぎる寝台。
彼の横には、未だに眠り続ける大河のような黒髪が一つ。当たり前の、幸福な朝。

『140文字SSまとめ vol.3』

[vol.2] ←  ★140文字SSまとめシリーズ★  → [vol.4]



140文字SSまとめ - vol.1 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.1〜No.10]
140文字SSまとめ - vol.2 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.11〜No.20]
140文字SSまとめ - vol.3 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.21〜No.30]
140文字SSまとめ - vol.4 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.31〜No.40]
140文字SSまとめ - vol.5 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.41〜No.50]
140文字SSまとめ - vol.6 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.51〜No.60]
140文字SSまとめ - vol.7 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.61〜No.70]
140文字SSまとめ - vol.8 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.71〜No.80]
140文字SSまとめ - vol.9 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.81〜No.90]
140文字SSまとめ - vol.10 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.91〜No.100]


Site Owner



袖黒鴉 (そでぐろからす)
絵描き 兼 文字書き




Booklog


応援してください



ランキング参加中


Twitter Account