Menu
Back

Sisizaryuseigun, since 2004.07.21

140文字SSまとめ - vol.7 [マオヒエ]

[ 厳密には140文字ではない話 - お題元 ]



61.『愛に近い執着』 ──── 2018/12/22

今となっては、奴を「こちら側」へ引き入れようとした理由すらも思い出す事が出来なくなっていた。
ただ、ひたすらに執着していた。追っては掴んで、直しては壊して、それでも飽き足らなくて。
自身にとっての「奴」とはどういった存在であったのか? もはや、真実は霧の中へと消えていくばかりだった。


62.『見えないサイン』 ──── 2018/12/23

読心術なんて、そう簡単に習得出来るようなものではない。
意思疎通を図るためという理由で習得出来るなら、この世にすれ違いの概念など存在しないのだ。
俺達、まだ「何も言わなくても通じ合えるような仲」なんかじゃないだろう?
そろそろ理解してくれよ。段階を飛ばしたら、見えるものも見えないんだ。


63.『物仕掛けと色仕掛け』 ──── 2018/12/24

「疲れたなら寝れば良いだろう」
「そういう問題じゃないんだ、ほっといてくれ」
「今日は下ろしたての羽根布団があるぞ」
「だからっ」
「特別に夜話も付けてやろう」
「ほっといてくれってば!」
「仕方ないな。ならば、今夜は特別に“色”をくれてやる」
「俺はっ……ん?」
「さあ、好きな色を言うがいい」


64.『こっち見てよ』 ──── 2018/12/25

艷やかで仄かに香の名残を漂わせる黒髪は、彼が自身に対して背を向けている証拠でもあった。
流れる闇がぴたりと視界を覆い尽くすと、彼は言葉も無く歩み始める。
なあ、こっちも見てくれよ! 俺だって……俺だって!
呼び止めようにも言葉が出ない。俺は、彼とはすれ違う事が当たり前だと思っていたから。


65.『頬に伝う雫』 ──── 2018/12/26

「俺は、お前と暮らすのが苦痛だよ」
「ああ、それは余も全くの同意見だな」
「こうしていると、嫌でもお前の事が分かってきてしまう」
「へえ」
「おかしいだろう?」
「そうだな」
「気持ち悪いと思っただろう?」
「別に」
小僧の頬を伝った涙を掬い取る。まあ、今回はこの辺りが限界か。全く、初心だなあ。


66.『捨てられないガラクタ』 ──── 2018/12/27

「いい加減、その襟巻きも捨ててくれよ」
「何で?」
「何でって……」
──不格好だからに決まってるだろ。
小僧が言うには、そういう事らしい。自身が勝手に作って寄越した物だというのに変な話だ。
当然、捨てやしないさ。世の中には捨てられぬガラクタの一つや二つくらいあるものだ。例えば、これとかな。


67.『時間よ止まれ』 ──── 2018/12/28

体温が感じられるだけで良かった。手からでも、唇からでも、何だって良かった。
血が通っている温度というものを、身体は無意識に理解している。だから、俺は夢から醒めたくないと何度も願った。
だが、世界の夜は必ず朝という目覚めを迎えてしまう。今、過ぎた一秒さえも、全ては残酷な過去でしかない。


68.『本当、だったり。』 ──── 2018/12/29

「俺さ、今年はここにいるよ」
「は? 何で」
「何となくだよ。たまにはお前と年末年始を過ごすのも楽しいかなって」
「そう言って死ぬほどつまらなかったらどうするんだ。余は責任なぞ取らぬぞ」
「そんな事ないさ、俺はお前の事が好きだから」
「ふーん、あっそう」
「今の、信じないのか?」
「当然だろう」


69.『独り占め』 ──── 2018/12/30

よく分からないが、小僧が今年はここに残ると言い出した。世話役を独り占め出来たという事は、今年の年越しが楽になったという事だ。
小僧であろうと話相手にはなるだろう。暇な正月が潰せるのはありがたいので、新しい話の種も少しは仕入れておくか。
何だ、その顔は。こっちは別に楽しくなんかないぞ。


70.『無理をするのは得意』 ──── 2018/12/31

「無理はするなと言ったはずだろう。余計な仕事を増やすんじゃない」
仕事もようやく納まったかという夜中に、小僧が過労で勝手に倒れた。
こいつの気合は高確率で空回りするという事をすっかり忘れていた。監督不行届だった自身も大概という事か。
「ま、さっさと治して寝正月を回避する事だな」
「面目ない……」

『140文字SSまとめ vol.7』

[vol.6] ←  ★140文字SSまとめシリーズ★  → [vol.8]



140文字SSまとめ - vol.1 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.1〜No.10]
140文字SSまとめ - vol.2 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.11〜No.20]
140文字SSまとめ - vol.3 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.21〜No.30]
140文字SSまとめ - vol.4 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.31〜No.40]
140文字SSまとめ - vol.5 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.41〜No.50]
140文字SSまとめ - vol.6 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.51〜No.60]
140文字SSまとめ - vol.7 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.61〜No.70]
140文字SSまとめ - vol.8 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.71〜No.80]
140文字SSまとめ - vol.9 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.81〜No.90]
140文字SSまとめ - vol.10 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.91〜No.100]


Site Owner



袖黒鴉 (そでぐろからす)
絵描き 兼 文字書き





Booklog


応援してください



ランキング参加中


Twitter Account