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Sisizaryuseigun, since 2004.07.21

140文字SSまとめ - vol.8 [マオヒエ]

[ 厳密には140文字ではない話 - お題元 ]



71.『どこか知らない場所へ』 ──── 2019/01/01

「光と闇が混ざり合える世界って、あるんだろうか」
小僧が窓越しの寒空を眺めながらひとりごちた。夜中の雪が風を連れ込み、びゅうびゅうと音を立てる。
「なあ、俺達って今以上に分かり合える存在同士だと思うか?」
「全然」
「ははは、やっぱりそうだよな」
小僧がどこか諦めたような表情で酒を煽った。


72.『そうだったっけ、覚えてないや』 ──── 2019/01/02

「さっきから何の用だ」
懐いた猫のように後ろ髪へと潜り込んでいく小僧に帝王が問い掛ける。
「やっぱり覚えてないんだな」
それを聞いた小僧が呆れて物も言えないといった様子で溜息をついた。
「貴様は多少の約束事すらも覚えられないのか?」
「どうとでも言え」
「……何だよ、本当に覚えてないのかよ」


73.『こたえられない』 ──── 2019/01/03

ぽつりと呟いた相手の言葉一つで、頭の中が歩いていた先の雪景色よりも真っ白になってしまった。
それは今すぐに結論付けるべき事なのか、それとも数日程度の思考を経るべき事なのか、そんな事すらも判断出来ない程の衝撃。
結局、そこから返せた言葉は「こたえられない」という、曖昧な一語だけだった。


74.『とっちゃ、やだ。』 ──── 2019/01/04

生きている年数が違えば、当然のように出会う人間の数も異なってくるものだ。
奴からすれば、俺という存在だって、流れ出ていく記憶の一部でしかないのだろう。
俺無しで生きていく奴の姿を考えようとすると不思議と胸がざわつき、苛立ってしまう。
俺はお前を離さない。誰かに取られるなんて、許せない。


75.『愛してはいるんだけど』 ──── 2019/01/05

「若者が好きそうなものというと、あまりにも幅広すぎますからね。難しいですねえ……」
行きつけの店で店主がそう答えると「だろうな」と、帝王が溜息を漏らした。
愛とは物頼りになりすぎても気持ちだけになりすぎても上手く伝わらないものだ。
帝王はその塩梅が分からなくて、いつも頭を抱えていた。


76.『迷子のお知らせ』 ──── 2019/01/06

「ったく、小僧め……また迷ったな?」
城の中はとにかく広くて、複雑だ。従者無き今では目印に乏しく、迷いやすい。つまり、そういう事だ。
なので、そんな時は外へ出るようにと伝えていた。城の近くにある大きな樹木の下で待っていれば、連れて帰ってやると。
小僧が待っている。仕方ない、行ってやるか……


77.『結論はとうに出ている』 ──── 2019/01/07

結論はとうに出ている。答えは「はい」だ。その二文字を弾き出す勇気を考慮しなければ、実に簡単な問題だ。
だが、その感情を素直に受け取るには歳を取りすぎていた。先を恐れるばかりで、たったの二文字も言えやしない。
空気は暗く淀むばかりで、その覚悟を曇らせる。望んだ未来は、まだ来そうにない。


78.『君とならできる』 ──── 2019/01/08

「いや、流石にそれは無理だろう……」
小僧に示された無理難題を前にして、帝王が肩を竦める。
「不老不死は出来て、これは無理なのか?」
不機嫌な表情を隠そうともしない小僧がすかさず反論する。
「しかしな」
「なら、俺とやろう! 俺となら……大丈夫だろ?」
「この我儘小僧めが……今回だけだぞ……」


79.『好きにならないはずがない』 ──── 2019/01/09

「才気煥発で眉目秀麗な武人か。そりゃあ、持て囃される事だろう」
「誰が」
「その純朴さも鍵なのだろうな」
「はぁ?」
「ははは! 貴様、今日は外でどれだけ文を貰った?」
「数えていないが……」
「おお、罪深い奴め」
「何が言いたい」
「貴様は自身の魅力に対して自覚が足りなさすぎると言っているのだ」


80.『若いときには無茶をしとけ』 ──── 2019/01/10

「もう良いだろ? 一気にやった所で疲れるだけだ」
「よう言うわ、本当はもっとやりたいくせに」
「独り善がりにはなりたくない」
「こちらが“構わぬ”と返せば、独り善がりにはならぬだろう」
「でも……」
「ククク、若い内に無茶はしておけ!」
青年の頭を優しく撫でる帝王の手は、冷たいけれど、温かい。

『140文字SSまとめ vol.8』

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140文字SSまとめ - vol.1 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.1〜No.10]
140文字SSまとめ - vol.2 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.11〜No.20]
140文字SSまとめ - vol.3 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.21〜No.30]
140文字SSまとめ - vol.4 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.31〜No.40]
140文字SSまとめ - vol.5 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.41〜No.50]
140文字SSまとめ - vol.6 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.51〜No.60]
140文字SSまとめ - vol.7 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.61〜No.70]
140文字SSまとめ - vol.8 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.71〜No.80]
140文字SSまとめ - vol.9 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.81〜No.90]
140文字SSまとめ - vol.10 [マオヒエ] - 厳密には140文字ではない話 [No.91〜No.100]


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袖黒鴉 (そでぐろからす)
絵描き 兼 文字書き




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